岩波書店宛要請書の経過報告

<※以下は、呼びかけ人が、2016年3月3日に送ったメールです。>

このメールは、昨年(2015年)5月に岩波書店の就業規則に関する「要請書」に賛同してくださった方々にBCCでお送りしております。

 あらためて賛同してくださったことに感謝を申し上げます。10日足らずの短期間に80名を越える方々が賛同してくださいました。その後、かなり長い月日が経ってしまいました。その間、これはどうなったのかと心配されておられた方もいらっしゃるのではないかと存じます。たいへん申しわけございません。以下、遅ればせながら経過報告をさせていただきます。

 まず、いただいた賛同署名は、昨年8月21日(金)に確かに岩波書店に提出していることを申し上げておきます。いつどのタイミングで提出するか、第2次の賛同を募るか、などと考えているあいだに、すっかり提出自体が遅くなってしまったというのが正直なところです。それでもせっかくいただいた賛同の意思をちゃんと岩波書店に伝えなければならないということで、たいへん遅くなってしまいましたが、昨年8月に、末尾に貼り付けたようなメッセージとともに、岩波書店に「要請書」を送付しました。

 その後、岩波書店側からの回答を待っていたのですが、1ヶ月を過ぎても一切返答がありませんでした。私たちとしては、この時点で、みなさまに報告さしあげようと一旦は思ったのですが、議論した結果、もう少しだけ待ってみよう、という結論に至りました。というのも、これまで、岩波書店に対して申し入れなどをおこなった際には、短くても何らかの返信があったからです。

 そこで私たちは慎重を期すべく、10月23日に、今度は配達証明郵便つきで「要請書」とメッセージを再度送り、回答をいただきたい旨をあらためて述べました。しかし、それでも今日にいたるまで返答はありません。

 以上のように、私たちは岩波書店からの回答を最後まで期待したのですが、岩波書店はこれを黙殺しました。みなさまには、結局お待たせしておきながら、何の回答も得られないまま、このようなご報告をお送りすることになってしまい、申しわけなく思っております。

 私たちは、今回のこの岩波書店の不作為について、経営陣が「著者」や「読者」からの集団的な声に対して無回答という意思表示をおこなったものとみなしています。みなさまからいただいたメッセージは、岩波書店の対応に対する怒りや憂慮が込められたものであり、それも合わせて提出させていただきましたが、そうした思いを正面から受け止めようともせず無視を決め込んだわけです。そのことに私たちは憤りを覚えますし、こうした対応のあり方自体が今日のマスメディアの問題を象徴していると思います。すなわち、「要請書」で記した危惧が一層現実味を帯びてきているのであり、私たちはそうした観点から、「要請書」の2次募集を含め、今後の対応を考えたいと思っております。

 なお、金光翔さんからは、「もし署名して下さった方々にメッセージを送る機会があれば、みなさまに心から感謝していることを是非お伝えいただきたい」との旨を承っていましたので、この場でお伝えしておきます。

 今後何か動きがありましたら、随時ご報告を申し上げます。また、みなさまの方で、経営陣から聞いた話など、何らかの情報がございましたらお寄せいただけると幸いに存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。

呼びかけ人
板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、愼蒼宇(法政大学)、鄭栄桓(明治学院大学)

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2015年8月21日
株式会社岩波書店
 代表取締役社長 岡本 厚 様

 拝啓 処暑のみぎり、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。

 さて、私たち(板垣竜太、鵜飼哲、愼蒼宇、鄭栄桓)は、本年4月に貴社が改定した就業規則の内容を知り、心底驚き、その解雇規程に関する変更の撤回を求めて、別添のとおり「要請書」を作成しました。そのうえで私たちは、5月20日を第1次署名集約期限として賛同を募りました。10日間という短期の募集でしたが、岩波書店の「著者」22名と、それ以外の「一般賛同者」62名が賛同してくださいました。特に何の組織的基盤があったわけでもないなかで、この数は問題の深刻さを雄弁に物語っていると思います。この間の経緯の詳細についてはブログ(http://iwashugyo.wpblog.jp/)で公開していますので、ご参照ください。

 「戦後70年」の、「平和」「人権」「歴史」をめぐる混迷した言論・運動状況のなか、この要請書に盛り込まれた認識は貫徹されなければならないと考えます。そこで私たちは、ブログ上で公開するにとどまらず、要請書および署名・署名者からのメッセージを直接提出することにしました。今後、この就業規則が実際に用いられる徴候があるなど、憂慮すべき事態を察知した場合は、2次募集を行なうなど、あらためて抗議等をおこなう所存です。

 この要請書を責任ある方々でご回覧いただき、ぜひとも要請を実現してくださいますよう、お願い申し上げます。

敬具

板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、愼蒼宇(法政大学)、鄭栄桓(明治学院大学)

〔連絡先等は省略〕

岩波書店宛「要請書」 朝鮮語(韓国語)版

금년 4월10일 이와나미(岩波)서점은 대단히 문제점이 많은 취업 규칙을 공포했습니다 . 특히 「회사 및 회사직원 또는 저자 및 관계 거래처를 비방 혹은 중상하고,또는 허위의 풍설을 유포 혹은 선전하여 회사업무에 중대한 지장을 준」 경우에는 해고의 대상이 될 수 있다고 한 점은 심각한 문제를 내포하고 있습니다.

     要 請 書(요청서)

금년 4월10일, 이와나미(岩波) 서점은 대폭적으로 개정한 취업 규칙을 공포했습니다. 이 개정판 취업 규칙의 「유지해고 또는 징계해고」한다는 조문 (제41조의 4)에는 「회사 및 회사의 직원 또는 저자 및 관계거래처를 비방 혹은 중상하고,또는 허위의 풍설유포 혹은 선전이 회사업무에 중대한 지장을 주었을 때」라는 조항이 있습니다.

우리들은 이것을 간과할 수 없습니다. 왜냐하면 이 규칙의 목적이 이와나미(岩波) 서점사원인 김광상씨의 언론활동의 봉쇄에 있는 것으로 우려되기 때문입니다.

재일 한국인 3세인 김광상씨는 이와나미(岩波) 서점이 발행하는 『세계(世界)』를비롯한 「인권」이나 「평화」를 표방하는 미디어가 사토마사르(佐藤優)씨를 적극적으로 기용해 온 것에 대해 「<사토마사르(佐藤優) 현상>비판」 (『임펙션』 제160호 2007년 11월)등의 논고를 통해서 문제제기를 해 왔습니다.

그것은 사토(佐藤)씨가, 「국익」이나 「납치문제해결」을 위한 외교 카드의 일환으로 재일 조선인 단체를 탄압해도 좋다고 주장하고나 (김광상씨의 지적대로 이대로는 국가의 형편대로 재일 조선인의 기본적 인권을 침해하는 것을 허용하게 됩니다) 이스라엘의 침략·억압 행위를 옹호하는 발언등을 되풀이하고 있었기 때문입니다.

그러나 이와나미(岩波) 서점측은 김광상씨의 비판적 문제제기에 응답하지 않았을뿐만 아니라 김광상씨 개인을 겨냥한 민족차별적인 허래스먼트를 되풀이해 왔습니다.

이 규정에 언급되어 있는 「저자」란, 2012년2월에 이와나미서점의 연고채용이 문제시되었을 때의 견해에 따르면, 동서점이 발행한 잡지까지 포함하여 과거에 한번이라도 집필 기고한 모든 사람을 가리키기 때문에 그 대상는 방대한 수가 될 것입니다.

예를 들면 관동대지진시의 조선인학살의 사실을 부정하는 구도미요코(工藤美代子)씨도 이와나미(岩波) 서점의 「저자」의 한사람입니다. 또 이 출판사의 「관계 거래처」도 주요 전국지나 지방지, 다수의 잡지도 포함되는 만큼 지극히 광범위한 것은 의심할 여지가 없습니다.

자기 회사나 그 사원, 「저자」나 「관계 거래처」에대한 비판이 자숙의 대상이 될 수 있다는 인식이 사회에 퍼진다면, 아베(安倍) 정권의 압력아래에 있는 일본의 저널리즘의 위축경향에 박차가 가해지는 것은 불가피합니다. 반동적인 「대학 개혁」의 와중에 있는 대학이나 각종연구기관의 취업규칙에 심각한 악영향을 끼칠 가능성도 우려됩니다.

새 취업규칙이 사원의 비판적 언론을 봉쇄하는 효과를 가질뿐만 아니라, 헌법이 보장하는 기본적 인권인 「언론·표현의 자유」를 침해하는 것은 명백합니다. 게다가 이러한 제도의 전례가 생김으로써 이후 이와나미(岩波) 서점내뿐만 아니라, 재일 조선인의 연구·언론활동을 실질적으로 「친일적」이 되도록 무언의 압력을 더욱 가하는 것이 아닐까, 우리들은 우려합니다.

이상의 이유로 우리는 이와나미(岩波) 서점에 다음의두가지 요청을 합니다.

1, 「회사 및 회사의 직원 또는 저자 및 관계 거래처를 비방 혹은 중상하고, 또는 허위의 풍설을 유포 혹은 선전하여 회사업무에 중대한 지장을 주었을 때」를 징계해고의 대상으로 하는 규정을 즉시 철회할 것

1, 기본적 인권을 침해하는 이러한 조항이 취업규칙으로서 효력을 가지고 있는 한, 사원의 언론활동등을 이유삼아 본조항을 적용치 말것

컴퓨터: https://iwashugyo.netowl-mailform.jp/

要請書にご賛同下さった方々(第1次集約)

※50音順。敬称略。「肩書・所属等」は、ご本人の記述によるもの。

【著者】
板垣 竜太(同志社大学)、鵜飼 哲(一橋大学)、小川原 宏幸(同志社大学教員)、河 かおる(滋賀県立大学)、小林 知子 (福岡教育大学)、 駒込 武(京都大学教員)、権 赫泰(韓国・聖公会大学教授)、酒井 直樹(コーネル大学教員)、坂元 ひろ子(一橋大学教員)、崎山 政毅(立命館大学文学部教授)、愼 蒼宇(法政大学)、徐 京植(東京経済大学)、宋 連玉(青山学院大学教授)、竹下 秀子(滋賀県立大学人間文化学部)、外村 大(東京大学教授)、戸邉 秀明 (東京経済大学教員)、冨山 一郎(教員・同志社大学)、中野 敏男(東京外国語大学教員)、 前田 朗(東京造形大学教授)、 松本 武祝(東京大学教員)、 吉澤 文寿(新潟国際情報大学国際学部教授)、他1名

【一般賛同者】
池田 宜弘(アジアこどもプロジェクト)、石川 哲朗(岩波書店出版物の読者(東京都在住))、イ ミンギ(民族教育をすすめる連絡会)、今政 肇(翻訳/社会文化人類学)、上田 順子(印刷業)、遠藤 竜太(神奈川高教組シニア運動)、太田 岳人、大槻 和也(大学院生)、岡田 雅宏(一市民)、緒方 義広(弘益大学校助教授)、呉 世宗(琉球大学法文学部)、呉 永鎬(一橋大学 大学院生)、郭 政義、柏崎 正憲(教員)、片山 貴夫、康 昌宗(会社員)、菊池 恵介(同志社大学教員)、金 優綺(在日本朝鮮人人権協会事務局員)、金 孝先、木村 智哉(研究者)、久保田 潤(反戦実しずおか)、高 和政、後藤 陽司(会社員)、木平 良史(同志社大学法学部学生)、金野 直行(東京都民)、嶋田 頼一、 徐 潤雅(大阪大学大学院生)、田中 一弘(労働者)、鄭 剛憲(団体職員)、鄭 初美、鄭 玹汀(京都大学研修員)、鄭 栄桓(明治学院大学)、沼田 欣二(無職)、野田 隆三郎( 岡山大学名誉教授)、朴 玲熙、橋野 高明(同志社大人文研 研究員・日本基督教団 牧師)、東本 高志(著述業)、 樋口 節子(自営業)、檜原 転石(会社員)、黄 金福、福田 光朝(会社員)、藤井 理嘉、ベ ヨンミ(立命館)、まえだ ヒソカ(福岡地区合同労働組合)、三浦 綾希子(中京大学教員)、山本 興正(大学院生)、吉沢 樹、吉田 明彦、米津 篤八(ソウル大学大学院修士課程/翻訳家)、李 相旭、李 智映(松江市民)、李 英樹(フリーター)、渡邉 理絵子(ふつうのおばちゃん)、他8名

岩波書店宛「要請書」の呼びかけ

本年4月10日、岩波書店は非常に問題点の多い就業規則を公布しました*。特に、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えた」場合に解雇の対象となり得るとした点は深刻な問題をはらんでいます。

* この就業規則についての詳細は、「首都圏労働組合 特設ブログ」をご覧ください。なお、同ブログで紹介されているのは案の段階のもので、実際に公布されたものとは若干の違いがありますが、「要請書」で言及している点に関しては変更はありません。また、「要請書」で触れている、金光翔さんに対する以前からの不当な処遇についても、同ブログを参照してください。
http://shutoken2007.blog88.fc2.com/

この就業規則問題に対し、岩波書店に対し共同で「要請書」(下記)を提出したいと考えております。賛同くださる方は、下記の要領で意思表示をしてください。

どうかよろしくお願いします。

呼びかけ人(50音順):板垣竜太(同志社大学)、鵜飼哲(一橋大学)、愼蒼宇(法政大学)、鄭栄桓(明治学院大学)

※この件に関する問い合わせは、下記のメールアドレスまでお願いします。
iwashugyo@gmail.com

【賛同の要領】

「要請書」に賛同いただける方は、次のページで必要事項を記入のうえ送信してください。
PC用: https://iwashugyo.netowl-mailform.jp/
携帯用: http://iwashugyo.netowl-mailform.jp/?type=mobile

なお、第1次の署名集約を5月20日(水)としたいと思います。

【要請文】

要 請 書

 本年4月10日、岩波書店は大幅に改定した就業規則を公布しました。この改定版就業規則の「諭旨解雇または懲戒解雇」の条文(第41条の4)に、適用可能なケースの一つとして、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えたとき」という項目があります。私たちはこれを看過することができません。というのも、この規則の目的が、岩波書店社員である金光翔さんの、言論活動の封殺にあるのではないかと危惧されるからです。

在日朝鮮人三世の金光翔さんは、岩波書店が発行している『世界』などの「人権」や「平和」を標榜するメディアが佐藤優氏を積極的に起用してきたことについて、「<佐藤優現象>批判」(『インパクション』第160号、2007年11月)その他で問題提起をしてきました。それは佐藤氏が、「国益」や「拉致問題解決」のために外交カードとして在日朝鮮人団体を弾圧してもよいと主張し(金さんの指摘どおり、これでは国家の都合次第で在日朝鮮人の基本的人権を侵害することが許容されてしまいます)、イスラエルの侵略・抑圧行為を擁護するなどの発言を繰り返していたからです。しかし岩波書店側はこの批判的言論に答えず、そればかりか、金さん個人を標的とした民族差別的なハラスメントを繰り返してきました。

この規定で言及されている「著者」が、2012年2月に同社の縁故採用が問題にされた際の見解通りに、雑誌類まで含めて、過去に一度でも寄稿したことのある人すべてを指すものとすれば、その数は膨大なものになるでしょう。たとえば関東大震災における朝鮮人虐殺の事実を否定する工藤美代子氏も、岩波書店の「著者」のひとりです。また、同社の「関係取引先」も、主要な全国紙や多数の地方紙、諸雑誌等が含まれる以上、きわめて広範であることは疑いありません。自社やその社員、「著者」や「関係取引先」への批判が自粛の対象になりうるという認識が社会に広がるようなことがあれば、安倍政権の強権的なメディア介入の圧力下にある日本のジャーナリズムの萎縮傾向に、ますます拍車がかかることは必至です。反動的な「大学改革」の渦中にある大学や各種研究機関の就業規則に、深刻な悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

新就業規則が、社員の批判的言論を封殺する効果をもつのみならず、憲法が保障する基本的人権である「言論・表現の自由」を侵害するものであることは明らかです。さらにいえば、このような制度の先例ができたことで、今後、岩波書店内のみならず、在日朝鮮人の研究・言論活動を実質的に「親日的」なものになるように追い込む、無言の圧力がさらに拡大するのではないかと、私たちは危惧しています。

以上の理由から、私たちは岩波書店に、以下の二点を要請します。

一、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えたとき」を懲戒解雇の対象とする規定をただちに撤回すること

一、基本的人権を侵害するこうした条項が就業規則として効力を持っている間、社員の言論活動等を理由とした同条項の適用をおこなわないこと